【今村遼平 塾 原稿 文章の書き方(1)】
2015年06月09日
・はじめに
今村さんは1963年3月熊本大学理学部地学科を卒業後、国際航業・アジア航測(顧問・技師長)に務められ、2015年4月から弊社技術顧問をお願いしています。また地盤工学会・全地連・海洋調査協会等の役員も務められ、地質及び地盤業界で長い間技術の最前線で活躍し、数多くの著書を執筆され、技術者の啓蒙育成に尽力されております。
今村さんには、社内で様々な講義をお願いし、技術者育成に活用させていただきました。その詳細は各著書を読んでいただければ良いのですが、量も多いことから大変で、しかも社内だけではもったいないと思いました。そこで今村さんに技術者に伝授したいこと等を整理し連載で書いていただくようお願いし、快諾を頂きました。そしてこの連載を見ていただいた技術者の皆さんの啓蒙育成に役立てば幸いです。 (興亜開発 石川)
文章(報告書・論文・社内報文など)の書き方(1)
今村遼平
1.誰に読んでもらう文章か?
(1)第三者に伝えるための論文の形式
社内外を問わず、「論文」には一応形式がありますが、今回そのことは別にしても、ともかく自分の考えを第三者に伝えて理解してもらうのですから、解りやすく、親切に書くべきです。自分はわかっていても相手は知らないわけですから、そのつもりで書きましょう。
(2)報告書は、お金をもらっての調査結果の報告ですから、次の条件が付きます。
1)目的に対する、ツボをこころえた回答でなくてはならない。
2)期限(工期)がある。
3)問題点を指摘し、その解決策が意見として示されていなければならない。
4)読む人(提出先)を念頭においた書き方をした方がよい。
とくに、相手が研究所(専門家)の人か、県や市町村の役所の人か、民間の人かなどによって、かなり違える必要があります。相手が専門家以外では、専門用語はできるだけ使わない方がいいでしょう。
5)間違いなく相手に伝わるわかりやすい文章でなくてはならない。
2.間違いなく相手に伝わる、わかりやすい文章とは?
では、間違いなく相手に伝わるわかりやすい文章とは、どういう文章か?
1)客観的であること ―“事実”と“意見”が峻別されていること―
2)文章構成が論理的であること ―筋みちだっていること―
3)わかりやすい文章であること。具体的には、
① やさしく簡潔であること
② ソフトであること(論文の場合は多少堅くてもよい)
③文章自体も論理的であること
④句読点のうち方や、かなと漢字の配分が適切であること
⑤かなで書くべきところと漢字で書くべきところの区別をつけることetc.
3.執筆構想の練り方(とにかく構想を練ったうえで書くこと)
(1)記述材料(素材)をそろえておく
(2)報告書(文書)の役割(目的)を確認したうえで書く
1)何に対する、どういう回答か
2)中間報告か、本報告か
3)必ず書いておくべきことは何か etc.
(3)主題の選定
1)目的に沿った“回答”を明らかにする
2)長さを考える ―本論で不要のものは資料(付録)へ回す―
3)読み手をイメージする
4)現場(なま)の情報を中心に構成する
(4)事実と意見の峻別
・事実とは、証拠をあげて裏づけすることのできるものである。
・意見とは、何事かについてあなたが下す判断(意見)である。
(ほかの人はその判断に同意するかもしれないし、同意しないかもしれない)
<事実>
1)自然におこる、あるいはおこった事象
2)公にされ、一般にも認められている自然の法則
3)過去に人間が関与しておこった事件・事象
4)現地で観察・確認でき、第三者がいつでも同様に観察・確認できる自然の形態・関係・現象など
5)いろいろの調査や試験をした結果、それが事実かどうかを第三者が客観的に観察できる事象
6)他人の発言を、引用者の言葉になおさないで、そのまま伝える場合
<意見>
1)推論:ある前提にもとづく推測、または中間的な結論
2)判断:ものごとのあり方・内容・価値などをみきわめてまとめた考え
3)意見:<推論>や<判断>あるいは一般的に自分なりに考えあるいは感じて到達した結論
4)確信:自分で疑問の余地がないと思っている意見
5)仮定:真偽のほどはわからないが、それは証明(もしくは反省)結果をみて判断するとして、仮にうちだした<仮の意見>
6)理論:証明になりそうなことが相当あるが、まだ万人にそれを認めさせるまでに達してない仮説
事実:ジョージワシントンは、米国の初代大統領であった。
意見:ジョージワシントンは、米国のもっとも偉大な大統領であった。
(人によって偉大な大統領についての考えは違います。それが意見です)
(5)かなで書くべき言葉
いつも気になるのが、学術論文の「執筆要領」において、かなで書くべき言葉を、漢字で書く人が多いことです。以下の言葉は、かな書きが原則です。これ以外にも多くあります。
表-1 かな書きにすべき言葉
良 不良 良 不良 |
おのおの 各々 および 及び
かりに 仮に かつ 且
ごとに 毎に ただし 但し
きわめて 極めて くらべ 比べ
ため 為 こと 事
ころ 頃 たとえば 例えば
かなり 可成り したがって 従って
ぐあい 具合 しだいに 次第に
さまざま 様々 いっぽう 一方
おもな 主な ある 有る、在る
おおむね 概ね いっそう 一層
あまりに 余りに おそらく 恐らく
いちじるしく 著しく また 又
おいて 於いて ごとく 如く
できる 出来る さいしては 際しては
かなり 可成り |